D2C 「世界観」と「テクノロジー」で勝つブランド戦略

≪著者≫
佐々木康裕
≪問い≫
D2Cビジネスをどう立ち上げるか
≪概要≫
D2Cの辞書的な定義は以下のようなものだ。
“新しい消費の価値観を持つミレニアム世代以下のターゲットに対し、ユニークな世界観を下敷きにしたプロダクトとカスタマーエクスペリエンス、SNSや店舗を通じた顧客とのダイレクトな対話、垂直統合したサプライチェーンを武器に、VCから資金調達を行い、短期的に急成長を目指すデジタル&データドリブンなライフスタイルブランド”
1. ブランドはメディア化し、プロダクトはコンテンツ化する
消費者はより深いレベルでブランドと関係を構築しようとしている。消費者は製品そのものの良さ、というよりは「誰がどう作っているか」「自分の生活をどう変えるか」「大義はあるか」といった「意味レベルでの価値」を重要視するようになっている。
1)企業(ブランド)は世界観を提供し対価を得る存在に変化している
2)そのために絶えず発信と顧客との対話を通じてコミュニティを形成する
3)プロダクトはただの“コンテンツ”になる
4)D2C時代は「コト付きのモノ」へ
2. 「後付けデジタル」は機能しない
パッチワーク的にデジタルとリアル店舗を接続させる「後付けデジタル」はD2Cとして機能しない。こうした企業の特徴は、既存店舗とECでの売上を別カテゴリとして計上する。D2Cの流れが「世界観を売る」「プロダクトはコンテンツになる」という変化だとすると、顧客がどこで購入したかは関係ないのである。
企業は従来の考え、行動を下記のように変容させる必要がある。
1)メーカーからテック企業/メディア企業である自覚を持つ
2)ブランドストーリーを徹底的に管理する
3)ARPU、離脱率、LTV等の評価指標が重要になる
4)ビジネスモデルや人材に必要な機能が「顧客のLTVを最大化すること」になる
3. D2Cビジネスの日本での展開
D2Cビジネスを展開するにあたって、デザインやクリエイティブは非常に重要な要素だ。プロダクトそのものではなく、その製品周辺のコンテクストを訴求している。すなわち製品開発と同じくらい「ビジュアルや言葉選びのクオリティ」がD2Cブランドの競争力の源泉となる。
日本では、アメリカと比較して長いデフレが続いているため、どの業界にも安価で高品質なものが溢れている。またコンビニやスーパーといった流通も充実しているため、「安い・利便性が高い」という訴求自体がそこまで魅力的ではなくなってくる。アメリカのように低価格志向に進むのではなく「高価格帯へのシフト」が重要になる。
4. これからのD2Cビジネスの潮流
現在VCが投資するD2Cの条件は下記のようなものである。
1)差別化され、粗利が高い商品を提供している
2)ゼロサム市場(一人が複数ブランを使い分けない)である
3)既存プレイヤーが功利でのみ販売し、顧客と直接接点を持たない
4)既存プレイヤーがマス広告に依存している
5)使用データが獲得でき、機械学習などでデータ分析の精度を上げられる
しかし今後は商材が多様化し、特に食品や飲料も参入してくるだろう。環境に対する意識が高く、アルコールを飲まず、ベジタリアンも多いミレニアム世代の価値観や食生活の多様性の変化をダイレクトに捉えた食材にはまだまだ成長の余地がある。
≪こんな人におすすめ≫
・経営者
≪併せて読みたい書籍≫
・〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則